インターナルマーケティングで従業員満足度を高める

 前回は、外部に向けてのマーケティングのお話をしていましたが、今回は会社の内部に向けてのマーケティングのお話をします。

<不動産業の離職率>

  私は職業柄、全国の様々な賃貸管理会社を見させて頂いておりますが、各社には一つの良く似た傾向があります。それは離職率の高さです。業種別の「新卒者離職率」(厚生労働省)によると不動産業は離職率が第5位。もっとも私が接する会社の多くは中途採用が主ですが、数年働いた上で退職ならまだしも、1年、早ければ数ヶ月ごとに人が入れ替わっている会社もあります。不動産業界は、他業界に比べ給与水準も比較的高く、特別な技術を必要とせず入りやすい反面、入ってみたら劣等な労働環境や、望まざる就業規則や福利厚生水準に嫌気が差してすぐに退職しまうということが散見されます。不動産業は、サービスが中心ですから、人的資源に依存していることが多いのが実情です。しかし、いつまで経っても人が固定されず、よって収益が改善されないため本来あるべき労働環境を実現できないという悪循環に陥っています。

<離職率の減らし方>

 離職率を減らすひとつの改善策として、「社員のモチベーションの維持」が重要と考えます。そこで重要なのが「インターナルマーケティング」という概念です。インターナルマーケティングとは、外向きのマーケティングではなく、企業が従業員に対して行うマーケティングのことで、従業員を顧客と捉え、従業員の仕事に対するニーズをつかみ、それを提供することで「従業員満足度(Employee Satisfaction)」を高めることを言います。仕事を強制的に与えるのではなく、従業員が進んでやりたいと思わせるように仕事をマネジメントする手法もその一つです。そして、従業員満足(ES)なくして、顧客満足(Customer satisfaction /CS)は成り立たないという考え方にたっています。

 ある事例として、社内コミュニケーションを重視し、『月間MPV制度』というものを実践してみてはいかがでしょうか。社員全員が毎月1回、今月頑張ったと思う人にコメントを添えて投票し、最多得票の人を表彰(金一封、または何かしらの褒賞)します。日本人的になかなか褒めることが苦手ですが、社員は『人前で褒められる』ことで、更に各個人のモチベーションが高まり、質の高い仕事に繋がりやすくなります。高い従業員満足(ES)が顧客満足度(CS)を高め、サービスの質の向上と共に売り上げが上がり、企業価値を高められるのです。ちょっとした工夫と社内での習慣を変える事で、プラスの循環に変えることができるのではないでしょうか。

<インターナルマーケティング 事例>

企業ミッションの作成会社の方向性を明示することで、全社員のベクトルを同じ方向に向ける。
社内イベントの強化月一のランチミーティング、社内レクリエーション
サンクスカード良い事をした人に対してサンクスカードを記入して、都度投票する。
月間MVP制度全社で1人だけその月のベストプレーヤーを決めて投票。良いコメントを全て発表
社員寮制度共通の生活を通じ、同じ釜の飯を食わせることで、企業文化を維持する。