インターナル・マーケティングで従業員満足度を高める!

Q:従業員のモチベーションが低く、管理をお預かりしているオーナーから「社員の表情が暗い」と言われてしまいました。オーナーとの接点が多い賃貸管理部門は離職率も高く、なかなか人材が定着しません。モチベーションを上げるためには、どのような方法が良いと思われますか?

A:従業員のモチベーションが低い理由にはいくつか考えられますが、誰もが自分がやっている仕事を「褒められたい・認められたい」と思っています。賃貸管理の仕事は割と地味な作業も多く、なかなか褒められていないのではないでしょうか。社員一人一人の仕事の存在感を高める場を作り、お互いを讃えあえるイベントをやってみると良いでしょう。

<顧客満足度をあげるための源泉とは?>

「マーケティング」と聞くと、顧客や見込み顧客に自社商品やサービスを売り込む手法をイメージするはずだ。ただ、いくら顧客に認められる商品やサービスを作ったとしても、商品と顧客をつなぎ合わせる、「管理会社の従業員」が仕事や働きがいに満足していなければ、オーナー満足度も上がらないし管理戸数も増えないだろう。従業員満足度が上がれば、モチベーションアップとともにスキルアップや顧客サービス向上につながる。すると、顧客満足度が向上することになり、口コミの拡大、リピート率アップ、企業に対する顧客ロイヤルティの高まりにより、企業の業績が高まって行くこととなる。つまり、従業員満足度を高めることが、結果として業績アップにつながることになる。

<インターナル・マーケティングとは?>

 ここで重要になるのが従業員満足度を高める施策「インターナル・マーケティング」という考え方である。管理会社の日常業務は、入居者や大家さんからしてみれば「できて当たり前」と思われがちだ。例えば家賃の集送金業務は、納期は決まっているが、送金明細の表記は1円足りとも間違えるわけにはいかない。また入居者からのクレーム対応も、緊急性が高く手間もかかるし理不尽に怒られるようなこともある。例え迅速な対応ができたとしても、「できて当たり前」と思われがちで、しっかりと業務をこなせても、感謝されることはあまりない。それどころか対応や数字にちょっとしたミスがあれば、すぐにオーナーや入居者から叱られてしまう。つまり、褒められることが少なくて、叱られることが多いため、モチベーションが高まりにくい環境に晒されているのだ。営業マンのように、数字が目に見えて実績として評価される「花形」とは違い、業務や実績が評価されにくい管理業務においては、従業員は疲弊してしまうばかりでなく、離職率が高まって結果として企業の業績が安定しなくなる

<従業員満足度を高める方法>

 そこで社員が生き生きと働ける仕組みづくりやイベントが重要となってくる。私が以前勤めていた会社では一年に一回、各自が行ってきた仕事の取り組みを自慢するコンテストを開催した。何故行ったのかと言えば、個々人が行っている業務や成果というのはあまり表立って評価されることはなく、評価されるのは営業ばかり。賃貸管理の仕事は、事務方やバックヤードの仕事は地味だけど、彼らがいなければ成り立たない。つまりもっと評価されて良い。せっかく行った取り組みを、表立って発表する場もないから、より仕事はつまらなく感じてしまう。つまりせっかく良い仕事をしているのであれば、もっと表現する場があっていいはずだ。そのような理由で始めることになった。

<社内発表会>

 導入方法としては、まずは部署予選を行う。一人一人が10分間の持ち時間でプレゼンテーションを行い部署全員で最優秀者を決める。その後、最終的に部署の代表が選出されて決勝戦が行われる。決勝戦はライブハウスを貸し切って行い、まるでお笑いグランプリのように、音楽や照明で登壇者とオーディエンスをあおって盛り上げる。部署の代表は、同じ部署のスタッフの応援を受け、限られている時間でプレゼンテーションを行う。優勝者には、賞金や毎年アメリカで行われているIREM(米国の不動産団体)の年次カンファレンスに、会社の幹部とともに参加する権利が与えられた。(太っ腹ですね笑)もちろんその際の費用は会社持ちだ。普段、あまり注目されていないようなバックヤードの部署が、自分のやっている取り組みを社員全員の前で発表し、一定の評価をされることは大きなモチベーションに変わる。ちなみに昨年の優勝者は事務方の従業員で、自社のサブリース物件の空室期間を下げることが会社の収益に変わるということを認識して、申込みから入居審査の期間を短縮し会社の利益に貢献したという内容であった。事務方のスタッフの取り組みは、このようなプレゼンテーションの機会がなければ、あまり目を向けられることはなかっただろう。従業員はもっと自分がやっている取り組みを、会社の上層部に知って欲しいと思っているのだ。

<仕事を遊びに変える>

 また、それ以外にも部活動制度というものも取り入れてもらった。3つ以上の部署にまたがって参加するのが条件で、活動をブログやソーシャルメディアで発信することが条件で、1年に1回、一人あたり5000円の活動費が会社から支給される。マラソン部、登山部、カレー部、涙活部(みんなで映画を一緒に見て涙を流す)など、当時はおおよそ8種類ほどの活動があった。もちろん複数の部活に参加しても良い。私自身、仕事と遊ぶことに関しては全力でやることをモットーにしているので、組織内の張り詰めた関係だけでなく、遊び仲間という位置付けで社員と接していた。社員同士で「共に遊ぶ」ことで、全体の雰囲気も良くなる。限られたメンバーだけではなく「オープンな遊びの場」を会社が提供することで、社員も生き生きと仕事に向かうことができる。ちなみに涙活部からは、社内結婚に発展したカップルまで誕生したのには、少し驚いたが(笑)。従業員が生き生きと働き、満足度が高まれば、自ずとモチベーションが高まり、従業員満足度が上がって行く。給与や報酬のような外発的モチベーションではなく、心のうちから沸き起こる内発的モチベーションを作り出させる環境こそ、結果として企業の業績に繋がってゆくのではないだろうか。