Q:これから管理戸数を増やしていきたいと考えているのですが、正直なところ自社の強みとなる部分が弱いです。広告を打ちたくても、発揮できる差別化がなく表現が難しく困っています。管理を増やすにあたってどんなところを強化すれば良いのかを教えてください。
A:管理戸数を増やしていくたびに従業員も増えていくのですが、それと同時にオーナーに対する組織全体の改善提案意識が欠如しやすくなります。従業員のスキルコントロール(能力統制)をして提案力が高い管理会社を目指しましょう。
<自社の競争優位性を作るために、必要なこととは?>
繁忙期も終わってホッとひと段落と言いたいところだが、全国的に賃貸仲介の取扱件数が減っているという声をよく聞く。首都圏の居住用賃貸物件成約件数(出典:アットホーム株式会社)によると、前年対比での成約件数が11.7%も減少していることがわかった。仲介件数が減り始めると、決まって賃貸管理事業への方向転換の話となる。管理事業はストックビジネスのため、仲介とは違い売上の見込みは立てやすい。ただ、「管理を増やす」と決めても、不動産への融資が厳しい現状では同時に売買仲介件数が減る。すると「管理替え」の機会も減るため、管理物件を増やしにくくなるのである。そのような背景の中で、どのような経営戦略を立てるのかが課題となるのだが、明確な自社の優位性を作らなければ、近隣ライバル会社と競合しても負けてしまうことになる。そこで重要なのが従業員のスキルコントロール(能力統制)だ。
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不動産業者の従業員で宅地建物取引士すら持っていない人が沢山いるが、これでは後発参入しても勝ち目はない。賃貸管理や仲介を作業的にこなすだけだと、不動産に関連する知識がなくとも業務が成立してしまうため、一見宅建が必要なくても良いという錯覚に陥る。ただ、資産家であるオーナーは不動産の素人が沢山いる会社に大切な資産を預けるだろうか。管理戸数を増やすほど人手も足りなくなるため、宅建保有者以外を入れることになるが、増えれば増えるほど従業員のスキルをコントロールしにくくなる。不動産管理会社は資産運用提案までやりたいのだが、オーナー側からすると管理会社にはそのスキルがないと思っている。結局、オーナーが発信している合図に到達できる知識がないため、管理物件が離れ、同時に売買仲介の機会も得られないという事態となり、管理会社は機会損失を起こしてしまうのである。このような事態に陥らないためにもスキルの強化をしなければならない。外部の税理士や弁護士とも連携を図ることはできるが、スピードを考えると自社内である程度の意味を理解できるように人材を育てていきたい。
<取得すべきスキル(資格)>
取得するべき資格としては、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士は必須としたい。もちろん100%が保有しているというのは人の入れ替わりがあるため厳しいと思うが、70%程度の保有者という不動産会社は存在する。それから次のステップではファイナンシャルプランナーを取得して欲しい。不動産、税金、相続、保険、金融商品など、資産全体のことを網羅でき不動産の位置付けを理解するのには非常に効果が高い。2級FP技能士などでも良いが、できれば1級FP技能士やCFPまで保有できれば、格段に知識レベルが上がる。次にCPM(米国不動産経営管理士)にもチャレンジして欲しい。不動産管理全体のことを知ることもできるが、金融商品としての不動産管理(アセットマネジメント)を理解することができるため、収益不動産売買の知識を格段にあげることができる。各団体から発行されているような相続に関する資格なども良いとは思うが、FPでもある程度は網羅されている。相続、売買、管理などの流れを掴むことができればより安定した収益源となるはずだ。資格保有者が増えれば、宅建〇〇人、FP〇〇人などと、ホームページや広告でも謳うことができ、さらに提案力強化で差別化を売り出すことができれば大きな優位性となる。従業員のスキルを高め、それを統制できることが勝ち組管理会社への一歩である。