<不動産業の「改革」は進むのか>
某大手広告代理店の一件以降、世間にはものすごい勢いで「働き方改革」の波が広がっていますね。内閣主導の「働き方改革実現会議」も、第一回の開催から間もなく1年。先日は、同会議の内容を反映した基本法の法案提出が厚生労働省から発表されました。法律ができるとなれば、改革の流れは今後一層活発化していくことになります。
一方で、私たちのいる不動産業界や賃貸管理業界は、残念ながら「ブラックな業界」と認識されがちです。日本労働組合総連合会の調査によれば、労働者が企業を「ブラック」と認識するのは「長時間労働が当たり前になっている」、「仕事に見合わない低賃金」、「有給休暇が取得できない」、「サービス残業が当たり前」、といった状況に置かれた時なのだそうです。私は仕事柄、全国の様々な不動産会社を見ていますが、4つとも当てはまってしまう会社は決して少なくありませんね(笑)。ですが、「不動産はそういう業界だから!」と開き直ってしまえば、今後は人材の維持も獲得もできない万年人手不足の状態になりかねません。電通事件から、日本全体がそうした働き方を許さない時代に突入してしまったのです。
<ブラック体質から脱するには>
この問題を解決するキーワードは、やはり「生産性」でしょう。特に賃貸管理会社は、生産性の低い雑多な業務を抱えがちです。入居者からのクレーム対応、遠方物件の定期巡回、駐車場の草むしり、ポスティング…、どれも管理会社の大事な仕事ですが、利益率は決して高くありません。しかし、管理の現場では、こうした利益率の低い仕事を高い人件費の正社員が、長時間の残業をしながら大量にこなしているのです。
ここで顧みたいのは『自社の目的は何か』ということです。企業である以上、利益の獲得は当たり前ですが、利益を得る方法は会社によって異なります。ある企業は、管理戸数を増やして管理料収入を増やすことだと言うでしょうし、ある企業はリノベーション提案で稼ぐことだと言うでしょう。ある企業は、売買案件や相続案件につなげることだと言うかもしれません。しかし重要なのは、『その目的を達成するための業務に社員が取り組めているかどうか』です。雑多な業務に追われて管理受託営業やリノベーション提案、売買の案内ができていないとしたら、それは『無駄に社員を働かせている』とも言える状態です。どれだけ働いても会社の目的が達成されないとなれば、社員も仕事にやりがいを感じられません。いつまでも終わらない薄給の長時間労働に、いずれ退職という選択肢を選んだとて不思議ではないのです。