社員教育のあり方

<人を育てる重要性>
 そろそろ、この負のスパイラルから脱するべきではないでしょうか。日本は少子高齢化の進行とともに生産年齢人口(労働力の中核をなす15歳以上65歳未満の人口層)が急速に減少しています。今年はついに有効求人倍率がバブル期以来の高水準に達しました。このまま離職率を改善できなければ人員確保もままならなくなります。
 不動産業界は、そろそろ本気で「人を育てる」ことを始めるべきです。そして同時に、離職原因の解決や業務の仕組み化などに取り組まなくてはなりません。社員教育は、効果が目に見えにくく即効性もない投資のため、費用をかけたがらない方も多くいらっしゃいます。ですが、企業が人の集合体である以上、人を育てるリターンは必ずあります。
 たとえば、中小企業庁が発表している最新の『中小企業白書』には、調査対象の「売上高に対する従業員の能力開発費割合」がまとめられています。これを見ると、財務状況等の特徴から「稼げる企業」「経常利益率の高い企業」に分類された企業の能力開発費割合が、「その他の企業」の2倍以上となっていることが分かります。もちろん、この調査結果から「社員教育をすれば稼げる」と言い切ることはできません。しかし、稼いでいる企業が社員教育に一般企業の2倍以上の費用をかけている、という事実は無視できないのではないでしょうか。

<人を育てる手法>
 社員教育に際して企業がまず行なうべきは、社員の自己研鑽に対するモチベーションの改善です。社員の向上心を育むことができれば、教育に対する企業の人的・金銭的負担も低減させることができるからです。具体的には「資格手当」や「月間MVP制度」などの導入が考えられます。日本人は褒めることが苦手ですが、社員は人前で褒められる・評価されていると実感することで、仕事や成長に対するモチベーションが高まります。
 能力向上策としては、まず各種の研修に参加させることでしょう。ニッチな業界ですが、不動産関連の協会や出版社、あるいは当社のような民間企業も頻繁にスキルアップ研修を開催しています。また、インターネットを介して動画形式の講義を受講する「eラーニング」での教育も効果的です。eラーニングの優れているところは、移動の時間や交通費といった時間的・金銭的コストを削減できる点もさることながら、研修に行かせただけでは分かりにくかった『個々人の習熟度・学習の進捗状況』を把握できるようになる点です。一方で、eラーニングは見ることが中心になりがちで、やはりライブの講習などと比べると「ただ見ている状態」に陥りやすいのが欠点です。できることであれば、eラーニングをライブで受けられる「オンライン研修」を取り入れて、従業員のスキルアップを図ることが望ましいと言えます。

 社内の研修とは違い、プロ講師による高度な教育は品質も均一ですから、複数の社員の習熟度向上が図りやすくなります。経営者やマネージャーは、部下の得手不得手を数字で明確に把握したうえで、苦手分野を重点的に学ばせるのか、得意分野をのばしてやるのか、会社としての方針や社員一人ひとりを個性に合わせた丁寧な教育が可能になるのです。