空室改善提案のカギは、管理会社の組織デザインから

<管理会社に必要となる3つの柱>

 私のクライアントは、ゼロから管理ビジネスを始める企業もあれば、10年間ずっと管理戸数が1,000戸くらいという踊り場にいる企業や、すでに数万世帯の物件管理をしている大きな企業など、その規模は様々です。経営者の方からアドバイスの依頼を受けて、事業戦略や業務効率化を進めるのですが、いつもまず初めに行う事があります。それは、現場の方と対話をしながら業務分析(業務棚卸し)を進めることです。全体像を把握するために、スタッフ一人一人の業務を細かく洗い出していきます。そのデータをまとめていくと不思議な事に、どの規模の管理会社についても、共通の問題が浮き彫りになります。それは、本来、管理会社が時間を費やすべき「分析・戦略・提案」という、3つの柱が大きく欠けてしまっているのです。

 例えば、一人当たりの月間総労働時間が200時間(残業が減っている今、180時間程度が主流かもしれません)あったとしましょう。スタッフが10名在籍していれば、スタッフの総労働時間は2,000時間となります。その2,000時間の内、「分析・戦略・提案」に注いでいる時間は、驚くことにほとんどの企業で3〜5%以下(60~100時間以内)なのです。つまり全10人のスタッフがいるのに、たった1人が、月に6~10日程度しか、それらに時間を注げていない計算となるのです。

 限られた人員で多岐に渡る業務をこなし、それにも増して緊急案件も従業員が対応するのですから、「分析・戦略・提案」などの『考える仕事』は後回しになるのは仕方がありません。しかし、オーナーの満足度を高め、かつ管理会社の生産性を高めるには、「分析・戦略・提案」の配分を20〜30%程度(400~600時間:つまり2〜3人が特化できる体制)に高めなければならないのです。その時間を確保するためには、適正な能力に合わせた人材の配置、つまり『組織デザイン』が必要となります。