賃貸住宅の企画事例と、市場調査の重要性

 今回は「賃貸住宅の企画」がテーマなのだが、その前に建てるための根拠となる「賃貸市場調査」について触れておきたい。なぜなら企画と言っても、いわゆる生産者志向で、市場に求められていない住宅を建てたところで、需要がなければ入居は決まらない。表面上の利回りだけ伝えられ気を良くして建てたものの、フタをあけてみたらなかなか決まらない物件は、これまで全国でたくさんみてきた。まさに絵に描いた餅である。我々は建てることがゴールではなく、建てたその後の運営を任される管理会社だからこそ、企画前の調査を重視する。市場調査といっても国や公的機関が調べているデータだけでは、漠然としたことしかわからない。生の情報を知るためには地道に調べることでしか、本当に必要としていることはわからない。

私たちが行う調査は「需要調査」と「供給調査」に分けている。まず、需要調査については、家族類型別に主に不動産会社へのヒアリングを行い、以下の5つのカテゴリーに分け、来店者割合(または反響割合)をヒアリングする。この時、人(賃貸仲介会社の営業マン)によって数字にブレが生じるため、できるだけ実際の来店者データなどを出してもらえるかどうかがカギとなる。

  1. 単身者
  2. カップル
  3. ファミリー(第一子が未就学児)
  4. ファミリー(第一子が小学生以上)
  5. その他(母子家庭、2世帯同居など)

 供給調査については、新築やリノベーションであれば、その案件地を中心に周辺エリアの物件をシラミ潰しに調べている。調査範囲は、エリアによって物件密度が違うので毎回異なるが、おおよそ1,000室〜2,000室程度を目標にしている。気をつけなければならないのは、大型物件が集中しているような都市部エリアの調査であり、1棟の戸数が多い物件は、その稼働率が数字に大きく影響をもたらすため、少し多め(3,000〜4,000戸程度)に調査をすることもある。調査方法は下記の通りとなる。

  1. 調査範囲を決めて、住宅地図から賃貸物件をピックアップ
  2. 物件名をもとにインターネットで情報収集(総戸数・賃料・築年数・間取り・専有面積など)
  3. 現地調査(入居率・外観・管理状況・周辺環境など)
  4. 調査結果をもとに分析
  5. 製本