賃貸管理業務、「内製化のデメリット」

<管理会社の問題点>
 前回の掲載で、私は賃貸管理会社が抱えがちな「分析・戦略・提案の不足」の問題を指摘しました。賃貸管理会社はとにかくやることが多く、目の前の仕事に追われるあまりに会社の成長に必要な「考える仕事」の割り当てが疎かになりがちです。いくら優秀な社員がそろっていても、彼らに広告宣伝や成長戦略を「考える仕事」を与えなければ、組織の収益は改善しません。業績に悩む管理会社は、まずこの「考える仕事」を行なえる余力を作るところから始めるべきです——、そこで私が提案させていただいたのが「管理業務のアウトソーシング」でした。
 勿体無いことに、不動産業界にはアウトソーシングという文化があまり根付いていません。代わりに、自分でなんでもやってしまうスーパーマンな社員さんにはよく出会います(笑)。探してみれば「退去立会代行」や「集金代行」「入居者からの電話受付代行」など、アウトソーシングできる管理業務は少なくありません。にもかかわらず、この「自分でなんでもやってしまう文化」の蔓延によって、空室募集からクレーム対応、配管修理、草むしりまで、担当物件であればなんでもやるのが当たり前といった考えが一般的です。
 確かに、オールマイティーな人材が育つことは悪いことではありませんが、組織として考えたとき、あるいは生産性を考えたときにはどうでしょうか。組織は人の集合であり、人の成長が会社を育てます。しかしご存知のとおり、この業界の社員定着率はそれほど高くありません。