賃貸管理業務、見える化の価値

■管理を任せる価値を伝えるには

 前述の通り、管理はハードワークです。しかしそもそも、その管理の「しんどさ」をオーナーは知っているでしょうか。漏水事故や火災といった緊急のトラブルが起これば、夜中に現地に駆けつけて対応することもあるでしょう。眠い目をこすりながらの業者手配、応急処置、入居者への案内、エトセトラ。そんな管理のしんどさを、皆さんはどこまでオーナーに伝えられていますか?
 報告をするだけであれば、電話一本、メール一通で済ませられます。しかしそれでは、皆さんの対応の重みやありがたみがオーナーに伝わりません。重み、ありがたみとは、言い換えれば「価値」です。「こんなことまでしてくれた、ありがたいなあ」と思うからこそ、人は何かのサービスに対して対価を支払う気になるのです。
 ならば私たちも、その「管理の価値」を伝える努力をするべきです。報告書を提出する、となると「電話一本」に比べて格段に負荷が高まりますが、管理に価値を感じてもらうにはその手間も必要でしょう。可能であれば写真つき、あるいは動画つきの報告をしたいものです。現場のリアルな様子を伝えることも「管理会社に任せる価値」となるからです。
 日々の入居者対応も同様です。ゴミマナー問題や騒音問題の解決にどれだけの労力が必要か、オーナーのほとんどはその実態を知らないままでいるでしょう。最初のクレーム受付から解決まで、担当者は方々に電話をかけ、時には原因となる部屋を訪問し、入居者間の意見の調整を行ない、ようやくのことで鎮静化させているはずです。その労働の「価値」は、正しい形でオーナーに伝えるべきではないでしょうか。

■価値の「見える化」がカギ

 なぜオーナーは「リーシング」ばかりを評価の基準にするのか。それは、稼働率という数字や毎月の送金明細によって、空室の状況が「見える化」されているからです。目に見えるから稼働率で管理を評価し、目に見えないから入居者対応等の業務では管理を評価しない…、目に見えるかどうか、実はとてもシンプルな構造がそこにあります。
 よって、リーシング以外の管理の価値に気づいてもらうには、リーシング以外の業務をどうにかして可視化する必要があります。先述のような管理業務のレポーティングは有効な手段です。毎月の送金明細と一緒にまとめて送付すれば、オーナーも管理料を支払う意義を実感してくれることでしょう。
 ただし問題は、多忙な賃貸管理の中では、なかなかレポーティングまで手が回らないという点です。解決策としては、報告書作成用の人員確保やアウトソーシング、IT活用による報告業務そのものの簡易化などが考えられます。管理をどのような方法で「見える化」していくかは、今後の管理会社の差別化・強みづくりを左右することになりそうです。