インターネット(以下:ネット)の存在は消費者購買行動を大きく変えました。例えば小売業において、販売店(以下:店頭)での売上規模が年々減少している一方で、楽天やAmazonなどのネット販売の売上規模は拡大しています。その要因として「ショールーミング」といわれる、消費者行動があります。ショールーミングとは、店頭で商品を手に取り、特徴・使い心地・価格などを確かめた上で、最終的にネット販売で店頭よりも安く購入することを言います。つまり、店頭で下見してネットで安く購入するということです。某大手電機販売店では、このショールーミングに対応しなかったことで顧客を奪われ、大幅赤字転落となったことは、まだ記憶に新しいのではないでしょうか。消費者は、より安く商品を買いたいのです。商品の型番さえ知ることができれば、無数にあるネット販売店で一番安い相場を知って買うことができるのですから、あえて店頭で面倒な価格交渉をして買う必要はありません。商品のことは販売員に聞いて、クチコミサイトで多面的な情報を知ることができるのですから、消費者からすれば、ショールーミングは合理的な購買行動なのです。
この消費者行動は、小売業だけではなく賃貸不動産業にも波及すると思っています。紙媒体が主流で、エンドユーザーの得られる情報が乏しかった十数年前は、不動産屋さんに行かなければ満足のいく情報が入らない時代でした。ところが昨今、ネットにより情報流通のスピードが速まったことや、クチコミサイトなどの出現により、エンドユーザーは無料で大量の物件情報を得ることができるようになりました。それにより、こんな部屋探しをする人が大量に出現するのではないでしょうか。
{ある部屋探しをしている人が、仲介業者さんで何件かの物件案内をしてもらう。一度、自宅に帰って検討すると言い、家でネットを見てお目当ての物件情報を収集しようとGoogleで物件名検索をする。ところが、調べているうちに大家さんから直接委託を受けている管理会社が分かり、出ている情報を見ると、なんと「仲介手数料無料」と書かれている。後日、管理会社に直接連絡を取り、改めて内見をして、最終的に客付仲介業者を通すよりも割安な条件で契約をすることができた。}
これは、『部屋探しのショールーミング化』とも言えるのではないでしょうか。ネット上にクチコミなどの物件情報が出るほど、エンドユーザーは自身で借りるかどうかの判断をし易くなります。仲介手数料が成功報酬である限り、部屋探しのショールーミング化を止める方法は事実上難しいと思います。仲介業者がそれに対抗するためには、「仲介手数料を下げる」または「仲介サービスの価値を高める」という2つの選択肢があるのではないでしょうか。値下競争をして仲介という経済を縮小させるか、差別化競争をして価値を存続させるか、これから多くの仲介業者が直面する大きな分岐点がやってきそうです。