オーナー満足度向上策で、生のクチコミを獲得

 業績が上がらない、 管理戸数が伸び悩んでいる…、悩みを抱える全国の賃貸管理会社様をご支援させていただくと、ある問題が共通していることに気がつきます。会社の規模は大小さまざまですから、これは賃貸管理業全体の特徴でもあるのでしょう。日々の業務は真面目にこなしているのに業績が上向かないのはなぜなのか? 今回は「オーナー満足度向上の効果」について考えます。

<繁忙期前の現状を確認>

 暑さの厳しかった夏も終わり、気が付けば繁忙期までに残された時間もあとわずか。本格的に忙しくなれば管理獲得営業も難しくなりますし、「今のうちに管理を増やせ」と指示している会社も少なくないのではないでしょうか。

 しかし一方で、管理物件のオーナーからは季節を問わず「稼働率を上げろ」と指示が入るものです。加えて、10月は先日のような台風被害も多く、入居者対応案件も積み上がっていきます。そうなると、現場はいよいよ目の前の仕事で手いっぱいに。管理も増やさなければならないし、稼働率も上げなければならない。やるべきことが山ほどあるにも関わらず、日々の仕事に忙殺され、結局何もできないまま繁忙期に突入してしまう…、この最悪のパターンだけは避けたいものです。繁忙期前のこの時期は、管理会社が能動的に動くことのできる最後のチャンスです。ここで何をやれるかが、競合他社との明確な差を作り出します。

<オーナー満足度向上に特化したクチコミ戦略>

 とはいえ、「管理を増やすこと」と「管理オーナー対応」を同時に解決することは、決して簡単なことではありません。十分な人員が揃っていれば話は別ですが、多くの管理会社にとって、両業務に人員を割くだけの余裕はなかなかないものと思います。

 そこで提案したいのが、「オーナー満足度アップ」に特化した営業戦略です。簡単に言えば、管理物件オーナーとのコミュニケーションを増やすことで、管理物件増加を狙う戦略です。やることは至って単純で、たとえば、オーナーと面談し、空室対策を提案することに注力します。あるいは、建物を維持するためのメンテナンスのアドバイスを行います。可能なら、セミナーを企画して賃貸経営ノウハウを提供してもいいでしょう。オーナーを集めての情報交換会を企画したりするのも有効だと思います。

 そうした「オーナー満足度向上」に特化した施策に期待するのは、満足度向上はもちろんですが、一番は「クチコミ」の発生です。クチコミといっても、Web上に氾濫しているようなものではありません。人から人へと伝わっていく、影響力の大きい「生のクチコミ」を期待するのです。

 成果が出るまでに多少の時間を要しますが、「実際に管理を任せているオーナー」からの情報発信ほど信頼性の高いものはありません。管理オーナーの持っているネットワークを広告網とすることで、管理受託数増加を狙いつつ、管理オーナーの満足度・信頼度の向上を図ることができます。

<長期的戦略に時間を投下するには>

 ただし、こうした「やってみないと結果が分からないこと」に対して時間を投下することに、多くの企業は後ろ向きです。なぜなら、冒頭で述べた通り、現場は既に仕事で手いっぱいになってしまっているからです。また、すぐに結果が出ない施策を実行するよりも、目の前の仕事を完璧にこなすことを選ぶケースも少なくないでしょう。

 しかし、その手いっぱいの状況を「良し」としていることにも問題はあるのではないでしょうか。いくら必要な業務といえど、部署のリーダーやマネージャーまでが入居者対応に奔走しているとしたら、それは大きな損失です。マネージャーは部署のマネジメントと同時に、自分自身の仕事を開発・開拓していく役目を担っています。それこそ、将来を見据えた長期的な戦略などは、マネージャーが自ら考え、自分の力でけん引していかなければならないのです。

 もし、それを実現できない理由が「多すぎる手元の仕事」にあるのだとしたら、時にはその仕事を「えいっ!」と投げることも必要です。その仕事を部下より上手にできるからマネージャーなのではありません。自分ができることを部下や外部に任せ、自分がさらに高度な仕事に挑戦するからこそマネージャーなのです。

 マネージャーには「持っている仕事を手放す勇気」が必要です。探してみれば、代替手法は本人が思っている以上にあるものです。電話対応等の雑務であればアウトソーシングが可能ですし、あなたの部下が思っていた以上に頑張ってくれることも考えられます。自分の仕事にしがみついていては、それ以上の成長は望めません。自分が「何をしないか」を決め、周囲の人材や便利なサービス活用できれば、会社の成長も自身の成長も自ずとついてくるはずです。

<オーナーとのコミュニケーション手段>