私が不動産業界に入った頃、不動産情報と言えば、住宅情報誌を買うか不動産会社に行くことでしか情報を得られない時代でした。当時は部屋探しをする人も歩き回って沢山の物件を見ていましたが、今ではインターネットの普及により、どこからでも手間をかけずに無料で不動産情報を取得出来るようになりました。昔に比べて部屋探しも随分と楽になったなぁと感じています。
さて、この20年間で大きな変化と言えばインターネットメディア(広告)の普及ですが、それにより消費者購買行動における意思決定プロセスが大きく変化してきました。有名な消費者購買行動は20世紀の初頭、アメリカの学者が提唱した『AIDMA(アイドマ)』と言われる法則があります。しかし昨今、インターネットを中心とした購買行動プロセスとして、2005年に電通が『AISAS(アイサス)』というモデルを提唱しました。注目すべきは二つの『S』、Serch(検索)とShare(共有)、つまり『ネット検索』と知識を共有する『クチコミ』です。
<AIDMAモデル>
購買決定プロセス | Attention(注意) | Interest(関心) | Desire(欲求) | Memory(記憶) | Action(行動) |
顧客の状態 | 知る | 興味を持つ | 欲しくなる | 検討 | 購買 |
モノを買うのも選ぶのも、ネットで完結する時代となり、その中でも特に消費者のリアルなコメント『クチコミ』は購買の意思決定に欠かす事ができません。洋服、レストラン、宿泊施設…など、衣食住いずれもポータルサイトにクチコミ機能は存在していますが、我々の業界のポータルサイトには、未だクチコミ機能が存在していません。クチコミによる評価は、意思決定において重要な判断材料ですが、クチコミが存在していない賃貸ポータルサイトでは、お客様は客付仲介業者や管理会社からの情報を得るしか無いのが実情で、正確な情報を得るために多大な時間を費やしているのでしょうか。
本来は、もっと効率よく情報を集め、今以上にネットで絞り込みをかけられたらラクに部屋探しができるはずなのですが実際は違います。お客様がネット上で部屋を決めきれない理由は、貸す側しか持っていない不利な情報を正確に得られない、いわゆる『情報の非対称性』にあります。つまり、仲介会社や管理会社しか知り得ない不利な情報は、あえて公開しないないため、入居者は自分の目で現場に足を運び、問題が無いかどうかを判断しなければいけないのです。
私は仲介営業マンをしていた時から一貫して、不利な情報であってもしっかりと公開した方が良いと考えていますし、それらを知った上でお客様が価値を決めても良いのではないかと思っています。それにより決まる物件と決まらない物件との格差は激しくなりますが、情報化社会においては、正確な情報がしっかりと公開されていること自体、理にかなっているのではないでしょうか。
賃貸ポータルサイトにもクチコミ機能ができ、管理会社側からの正確な情報発信力、物件力や管理能力そのものが問われる時代がすぐそこまで来ているような気がしています。
<AISASモデル>
購買決定プロセス | Attention(注意) | Interest(関心) | Search(検索) | Action(行動) | Ahare(共有) |
顧客の状態 | 知る | 興味を持つ | ネット検索 | 購買 | クチコミで情報発信 |