クチコミサイトを活用して空室対策

 私は、モノを消費しようとするときには、必ずと言っていいほどインターネット上の「クチコミ」を参考にする。良い情報だけでなく悪い情報も同じ消費者目線で描かれているため、消費判断をしやすいためだ。例えばある高級掃除機を買おうとした時、メーカーはCMで最新技術を伝え、小売販売員は販促のため上手にそれを実践させる。しかし、実際に高いお金を払って良かったのか悪かったのかという感想は、消費者にしか判らない。最近は、ホテル・ゴルフ場・家電・ECサイトなど、あらゆるサイトで口コミが存在しているが、これまで賃貸不動産にはあまり馴染みがなかった。

<物件探しにもクチコミが?>

 ところが不動産業界にも、数年ほど前から口コミサイトが徐々に市場に浸透し始めた。不動産取引と言えば、賃貸であっても高額が動き、特に情報の非対称性(業者が持っている情報と消費者側が持っている情報の差)が大きいために、住んでみて失敗したなどというトラブルも多い。実際に、物件を斡旋する営業マンは、その部屋に住んだことがない人なのだから、住んだ感想を言えるはずもないのに、懸命に良いところを営業する。そのような状況であるからこそ、本来、不動産こそリアリティーのある、良質な口コミの重要性は高いのである。

 不動産クチコミサイト「マンションノート」を例に挙げてみると、そこには様々な情報が描かれている。

  1. 現在、過去の居住者からの物件・周辺環境等のコメント
  2. 物件の詳細所在地
  3. 設備情報
  4. 項目ごとの物件のスコア(評点)

これまでであればあまりオープンにならなかった情報も、かなりリアルに記載されている。ここでのポイントは、「設備情報や物件のクチコミは、大家さんや管理会社も投稿が可能」ということである。つまり、投稿すれば物件のスコアを上げる要因ともなる。情報意識の高い管理会社は、すでに管理物件の情報を随時追加している。まだ物件や地域により情報量の差が大きいが、近い将来、部屋探しをしている人は、必ず口コミを見て物件成約の可否判断をすることになるだろう。実際に最新の調査によると、約44%程度の人が口コミを参考にしていることがわかる。

21c住環境研究会(入居者アンケートより)

 物件のリノベーションや賃料改定など、目の前の物件力向上も大切であるが、それらの良い情報を実際に住んでいる入居者から拡散してもらうことが、IT時代の空室対策とも言えるのではないだろうか。