賃貸管理業は、卸売業・製造業などと違い、オートメーションをし難い属人的な業務が中心で、人材や個々の能力が企業価値を左右します。しかしながら、以前にも触れましたが不動産業の離職率は業種別に見ても上位に位置し、人材確保がうまく行かない事で、本来得られるべき多くの機会損失を起こしている可能性があります。それでは、従業員が離職することで、企業にどれくらい損失があるのか、考えてみましょう。
<離職にかかるコスト・損失>
①従業員そのもの
- それまで在籍していた従業員がいなくなります。
②入社するまでの募集コスト
- 当該の離職従業員が入社をするまでに、多くの人材の中からの募集・選考・面談・採用決定というフローを経ますが、そこまでには多くの時間とコストを費やしています。
③入社した後の教育・研修コスト
- 入社後の、新入社員研修(OJT、OFF-JT)、スキルアップ研修に要する時間とコストです。
④教育のためのマネジメントコスト
- 教育をする上で、上長が下級従業員にたいして、企業文化・ミッション・ノウハウなどを教えて、それを継続するために費やす時間があります。さらに、勤務評定にかかった時間も少なくはありません。
⑤オーナーからの信頼
- 従業員の離職率が高い場合、オーナーから企業体質に問題があるなどの風評が広がり、場合によっては受託が離れてしまう事もあります。時として離職従業員が既存オーナーを巻き込んで、大切な管理物件が離れてしまうという場合もあります。
⑥組織の効率と生産性
- 組織デザインにもよりますが、部門別で業務の割振りをしている場合においては、1人の従業員を失う事でチーム全体の業務バランスが崩れます。先にも述べた通り不動産管理業はオートメーションが難しく、特に属人的な業務が多いのですが、1人の従業員の離職を補うために、その周りの従業員の時間が割かれ、ストレスが上がり、組織の生産性やモチベーションは著しく低下します。
⑦知識の損失
- 最も見えづらく、そして非常に大きいのが知識の損失です。個々の頭にしか持ち得ないノウハウや固有の知識は、その多くが共有されることがない暗黙知です。オーナー情報や、個人情報、業者とのやり取りなどのデータは会社の情報的経営資源であり、目に見えづらいためその情報の価値が放置されがちですが、場合によっては長期的にその損失が発生する事になります。
上記の通り、離職に伴う企業の損失は非常に大きく、その後、また人材を募集することになり、繰り返すたびに企業の経営資源が失われることになります。離職率を軽減するためには、退職者面談を行い、何が原因で離職に至ったのかということをはっきりさせます。それに対する改善策を、幹部ミーティングを実行して話合い、改善していく必要があります。離職率を減らす事で、安定した組織の構築や、さらに良い人材の確保ができるという、プラスのスパイラルにする事が可能になるでしょう。