選ばれる管理会社の条件②

 業績が上がらない、 管理戸数が伸び悩んでいる…、悩みを抱える全国の賃貸管理会社様をご支援させていただくと、ある問題が共通していることに気がつきます。会社の規模は大小さまざまですから、これは賃貸管理業全体の特徴でもあるのでしょう。日々の業務は真面目にこなしているのに業績が上向かないのはなぜなのか? 今回は「選ばれる管理会社の条件」について考えます。

<「また来年」にならないために>

 前回は、オーナーに対する報告・レポートの重要性について話をしました。空室の反響状況や入居者からのクレームなど、手間であってもきちんとした報告をしなければ貴社の「管理」の価値は下がるばかり。もし多忙が理由で実行できないなら、ITやアウトソーシングを活用して価値ある仕事をするための時間を創出するべき——、ざっくり言えばこんな内容でしたね。

 是非、業務の落ち着くこの時期のうちに、重要度の高い仕事をするための仕組みづくりに挑戦してもらえたらと思います。特に、業務フローや人員配置が大きく変わることになるIT系サービスやコールセンターの導入は、今の時期を逃してしまうと「また来年」ということになってしまいかねません。やるからにはなるべく早く検討を始め、遅くとも10〜11月までには導入完了、満を持して繁忙期に突入!…といった理想のスケジュールを目指しましょう。

<募集戦略のある会社になる>

 さて、今回はリーシングについて考えます。シビアな話ですが、大多数のオーナーが管理会社に望むものは、やはり空室を解消する「客付け力」です。先述の通り、こまめな報告等ができなければオーナーの信頼は得られませんが、一方で、募集の強い管理会社はそれだけで信頼を得やすい、というのも事実です。

 しかし、空室を埋めるにしても「埋め方」というものがあります。場当たり的に、オーナーに『家賃を下げましょう』と迫るだけでは、たとえ空室は埋まったとしてもオーナーの心には不満が残ります。また、安易に値下げを勧める管理会社は、果たしてその行為の意味に気づいているでしょうか。仮に3千円であっても、1棟10戸のアパート全室で賃料を下げれば年間36万円の収益減、これを利回り7%で割り戻せば520万円弱もの資産価値下落となります。『家賃を下げましょう』とは簡単には言えないはずです。

 真にリーシングの強い会社を目指すなら、募集のための戦略と戦術を持つべきです。実務的に「すべての空室」は難しいにしても、せめて「長期空室物件」についてはオンリーワンの戦略を持ちたいものです。ちなみに当社では、60日以上の空室を「長期空室」と定義し、長期空室の発生と共に対策チームを発足、募集戦略を再構築するスキームを作っています。

 実際に戦略を練る方法ですが、欠かせないのは「分析」です。分析なくして戦略構築はできません。市場分析の基本は「需要」と「供給」。中でも『需要はあるものの供給が足りていない』そんな『需給ギャップ』を見つけることが市場分析の要になります。たとえ供給過多の1Kであっても、需給ギャップのあるところ、たとえばペット可ニーズや高齢者・外国人ニーズなど「需要に対して供給が足りない」ところを攻めれば、空室解消の可能性も見えてくるかもしれません。

 もちろん、これらは一般に敬遠されがちな条件ですが、市場分析の結果として提案を持ち込めば、オーナーは少なくとも「家賃を下げる」という提案よりは良い印象を抱くでしょう。また、最終的に家賃を下げざるを得なかったとしても、戦略の有無によってオーナーの納得度は大きく変わってくるはずです。

<「考える時間」の創出>

 管理会社は本来、こうした分析や戦略構築、つまり「考える仕事」にもっと時間を割くべきです。作業的な業務にばかり時間を費やしても、オーナーへの価値提供は困難です。市場や反響の分析、空室対策のディレクションがあってはじめて、オーナーは管理会社の価値を実感します。

 多忙を理由にそれが実行できないのであれば、空室対策専門のチームをつくるのも手です。一人に何でもやらせようとすれば、必ず何かがおろそかになります。それぞれ「やらない仕事」を決めて、本当に必要な仕事にリソースを集中させる。人員的に難しければ、例示のように長期空室だけでも、臨時対策チームを作って戦略を構築させてみるべきです。

 それも難しいというなら、完全に業務がオーバーフローしている状態です。アウトソーシング等をうまく利用して「やらない仕事」を外に投げ、社内に「考える時間」を創出するべきでしょう。空室に困っているオーナーは、管理会社からの提案を待っています。特にこれからの閑散期、どんな提案ができるかがオーナーのロイヤルティ(忠誠心)に大きな影響を与えることになりそうです。

<ラ・ステラ リーシング計画表>