繁忙期の空室対策

 繁忙期(2〜4月)の3ヶ月間は、多い時で年間賃貸借契約数の約4割が集中する。言い換えれば、この時期は一年を通して圧倒的に賃貸住宅の需要が高まるのである。「空室対策」というと、閑散期に差し掛かった5月後半くらいから、ようやく本腰を入れて動き出すことがあるが、需要が低くなっているその時期では、すでに遅い。閑散期は需要も下がり、ライバル物件が募集条件を譲歩し始めるため、成約させるためにオーナーは、より不利な条件にしなければならなくなる。「空室対策」と言うと、特別な何かがあるような尋ね方をする人もいるが、特別なことをする必要があるわけではない。管理会社としてどうしたら決まるのかを意識し、やれることをやるだけである。

 入居者ニーズアンケート意識調査2016(21c住環境研究会)によると、内覧をする人の約60%もの人が、「管理状況を重視する」と言う結論が出ている。さらに、「管理状況のどこを確認するか?」と言う問いに対して、第1位は「ゴミ置場」で約75%、第2位は「玄関・廊下の汚れ」で約60%、第3位が約50%で「郵便受け(集合ポスト)」と言う結論が出ている。このように、アンケート結果の3位までと、多くの人が「清潔性」を求めていることは、無視できない。専有部の汚れや臭いは当然であるが、共有部の虫の死骸やクモの巣、既存入居者の放置物、過去の入居者の残置物(放置自転車)などは、大きくマイナス評価になる。また、集合ポスト周りにも気を留めたい。

 よくあるのが、集合ポストで空室になっている部屋の郵便受けに、大量のチラシが投函されているケース。ポストから溢れるチラシが散乱して、雨水に濡れ、紙がドロドロに溶けた状態になっていることもチラホラ目にする。それでは、入居希望者はその物件には申込みを入れないだろう。このようなことも、空室の集合ポストにテープを貼るだけで、汚れるリスクを大幅に減らすことができる。普段から物件を見慣れている管理会社は気にも留めない部分であっても、初めて見る入居希望者にとっては、全てが新鮮に目に映る。この時期だからこそ、普段当たり前に見えているものを見直すチャンスなのだ。