プロモーションの有効活用(プッシュ戦略とプル戦略)

 管理会社はオーナーからの要望に応える事で、CS(顧客満足度)を高めることになるわけですが、その要望の中で一番フォーカスされるのは入居率です。見事な入居者クレームやトラブル対応をしたり、ミスの無い完璧な支払い明細を作成しても、オーナーからしてみれば出来ていて当たり前。それよりも、物件の入居率を高める事がオーナーのキャッシュフローを安定させ、結果としてCSを高められる事は言うまでもありません。

 入居率を高めるためには、いかに多くの人に、どのように物件の良さを知ってもらうのかが重要ですが、賃貸業界ではその流通チャンネルが少なく、多くの業者は限られたメディア(大手ポータル)のみに依存しています。例えば、空室物件を大手ポータルに掲載するだけで終わらせていては、この空室が多い時代には入居希望者の目には届きにくく、空室期間は増すばかりです。その結果、オーナーからしてみれば『募集活動をしっかりと行っていないから決まらない』と感じてしまう訳です。管理会社としてみれば、しっかりと情報を出しているのに決まらない…と言っても、入居率という結果が全てです。そこで今一度、プロモーション戦略について考えてみましょう。まず、入居者を空室物件に引き込むには、プル戦略とプッシュ戦略の2つの方法があります。

 プッシュ戦略とは、通常、メーカーが小売り業者を介して、面前販売など行い売り込んで行く『押しの営業』の事で、例えば街角で無料配布している『レッドブル』などもその事例の一つです。我々の業界で言えば、管理会社(管理部門)から客付け仲介(仲介部門)にプロモーションを行い、仲介営業マンから直接、入居希望者に人的営業をしてもらう、いわゆるBtoB戦略に近いと言えます。

プル戦略とは、各種メディア(マス広告、ホームページなど)を利用して、物件の魅力を前面に出し顧客を引き込む『引きの営業』の事を言い、ポータルサイトやホームページなどを利用して、入居希望者からの問い合わせを直接引き込むBtoC戦略に近いと言えます。

<プル戦略・プッシュ戦略>

即時実行可能準備に時間を要するもの
プル戦略物件写真の改善キャッチコピーの強化モデルルーム物件専用広告作成ブログを利用した、詳細情報の開示(近隣情報含む)物件力強化動画を用いた情報発信物件名でSEO対策自社のブランディング強化物件専用サイト構築物件クチコミ情報の開示
プッシュ戦略訪問営業FAX営業メルマガ配信内見後のヒアリング※いずれも仲介会社へBtoB専用サイトノベルティ配布客付けキャンペーン実施懇親会などのイベント※いずれも仲介会社へ

 これまでの賃貸業界といえば、客付け仲介会社主導のビジネスモデルが中心で、管理会社は、客付け仲介営業マンに依存したプッシュ戦略を中心にプロモーションを行って来ました。しかし一方で、市場に空室が増えた事で客付け仲介会社への依存が高くなりすぎたことと、多くの管理会社が戦略的にプロモーションを行わなかった怠慢のために、業界内には『AD(広告料)を支払う事で入居者を決めてもらう』という悪しき文化が浸透してしまい、本来還元されるべき消費者=入居者に還元されないまま、オーナーの賃貸経営を圧迫しているのが現状です。

 昨今のネットやスマホの普及により情報流通性が高まった事で、客付け仲介中心のポータルメディアのあり方そのものも大きく変わり始め、今後は消費者志向がさらに強くなり、下記のプル戦略の有効活用が重要になるでしょう。その結果、情報開示精度もさらに高まり、決まる物件と決まらない物件の二極化が進む傾向が強まるのではないでしょうか。