人的資源(HR)の使い方

■社内でやればコストは減るのか

 多くの経営者が挙げる「アウトソーシングしない理由」は、なんといってもコストでしょう。限られた管理料から、外注すれば自社に残るお金がなくなってしまうと感じると、経営者は社員を使い倒そうと動いてしまうのです。確かにコストは悩ましい問題で、最近ではアウトソーシングのコストを削減するために「内製化(インソーシング)」をする動きも、特にIT関連業務を中心に出てきているようです。社内で課題を解決すれば、情報のやりとりも高速化されて業務の効率化も図れます。

 しかし、この「内製化」と「何でも自社でやる」とは少し違います。アウトソーシングをやめて内製化する場合、先に挙げたようなIT関連業務であれば、自社でエンジニアを雇う、あるいはエンジニアを育てることで内製化を行ないます。つまり、専門職を社内に置く=内製化なのです。一方で、不動産会社では専門性を無視した「どんな仕事でもやる社員」が多数いる状態です。苦手な業務や専門性が必要な業務も一般社員が担うのですから、コストの削減にも業務の効率化にも繋がっていません。

 適材適所の言葉通り、営業が得意な社員には営業に専念させたほうが生産性は高まります。リーシングをし、入居者対応をし、管理受託営業をし、オーナーセミナーのチラシも作る…、これではどれも中途半端な仕事になってしまい、また本人の体力的・精神的負担も相当なものとなってしまうでしょう。

■社内外のリソースを柔軟に活用

 アウトソーシングのコストを考えるには「売上を伸ばす」という思考が不可欠です。確かに、セミナーチラシの制作をデザイナーに外注するとなれば金額が気になります。しかし、そのチラシをセミナー集客だけでなく「当社はこんなセミナーを開催しているんです」とオーナーにアピールする営業ツールとして再利用できると考えたらどうでしょうか。おそらく、社員がWordで作った簡素なチラシでは同じ役目は果たせません。しかし専門家に外注することで、集客力が高いうえに営業にも使えるツールが手に入ります。
 最近では「ランサーズ」をはじめ、クラウドワーカー(Webで活動をするフリーランスのデザイナーやエンジニアなど)に外注する「クラウドソーシング」という新しい選択肢も増えました。広告代理店を通さず制作者に直接アプローチできるため、アウトソーシングのコストも割安です。生産性の下がる仕事は社外の安い労働力に任せ、社内のリソースは「売上を伸ばすこと」に集中する。これからのビジネスで大切なことは「何をやらないかを決める」ことで、社内外のリソースを柔軟に活用していくことではないでしょうか。