無駄とリスクを、外部教育機能で補う

 4月になると、たくさんの新社会人が不動産業界で働き始めました。かつては大量採用のあとで「しごきに耐えられた新人だけを残す」なんて会社も少なくありませんでしたが、少子化の影響から採用が厳しくなっている昨今、「貴重な戦力としてじっくり育てたい」と考える会社が増えているように感じます。
 しかし、社員教育の現場にはいくつかの障害が存在します。効率的な教育を叶えるためにはこれらの障害を取り除かなければなりません。

<生産性を下げずにどう教えるか>
 まず考えるべきは、教育を行う時間の確保です。当たり前の話ですが、新人教育にはマネージャーの業務時間を使わなければなりません。ところが、マネージャーの業務時間が教育に割かれれば、会社全体の「労働生産性」が低下します。しかも、この教育時間は、社員を採用するたびに何度も何度も繰り返し確保を求められます。
 つまり、生産性の確保と社員の教育は、どちらかに傾くシーソーのような関係なのです。教育に注力すればするほど社内の生産性は低下します。生産性を確保したいなら、会社は時間を圧縮しつつも効果のある教育を行なう工夫をしなくてはなりません。たとえば「年に一度、新卒採用しかしない」といった採用ポリシーを掲げ、年内の重複教育をなくすといった工夫です。

<専門知識をどう平準化するのか>
 次に、教育する内容についてです。賃貸管理は業務範囲が広い一方で、決して浅い内容の仕事ばかりではありません。時として、法律・税金の専門知識や、設備修繕等の専門技術が必要となります。
 そして、その専門性の高さが社員教育の障害となります。なぜなら、すべての専門スキルを網羅するようなスーパーマン的マネージャーは、得てして社内に存在しないからです。加えて、名プレーヤーが名監督とは限らないように、優秀な社員が優秀な教育者とは限らない点にも注意が必要です。幸運にも専門知識豊富な社員が在籍していたとして、しかし彼に「教える力」が不足していては効果半減です。
 専門的な内容も、分かりやすく教える。効率的な教育のためには、あらゆる分野に精通する「教え上手」の力が必要なのです。