このところ、社内の生産性向上や社員教育、社内体制構築といったテーマでお話をさせていただくことが続いています。やはり全国にいる私のクライアント企業も「人財」の問題に苦労されているようです。ただでさえ不動産は離職率の高い業種だというのに、日本の有効求人倍率は順調に上昇中。8月の有効求人倍率は1.52と、なんと43年5か月ぶりの高水準となっており、各社の人事担当者様は応募の少なさ・辞退の多さに苦労されていることかと思います。
こうした現状を鑑みれば、人財問題の解決策は「社員に長く働いてもらえる環境を作る」が結論になるでしょう。採用にも教育にもコストがかかる以上、短期の入退社が続けば会社の収支は悪化してゆくからです。このあたりは、短期の入退去が繰り返されることで収支が悪化する賃貸経営と同様と言えるかもしれません。つまり、これからの管理会社に必要なのは、入居者に長期入居を促すのと同じように、社員に長期勤続をしてもらうための考え方なのです。
■「考える仕事」が負の連鎖を断ち切る
そもそも管理会社の高い離職率は何が原因なのでしょうか。私は、管理業務が広範かつ煩雑な業務の集合体であること、それ故に、社員の仕事が「作業的」な、満足度の低い業務ばかりになりがちなことが原因だと考えます。残念なことに、管理会社の仕事は「やりがい」を感じにくい業務が多くを占めています。それは本来やるべき仕事に専念できない環境にも問題があるのです。結果、社員の仕事に対するモチベーションは低下しやすく、退職にも繋がりやすい環境となっているのです。
「そんなの、どこもそうだよ。うちが特別悪いわけじゃない」と仰る方もいらっしゃいますが、だからといって私はこの状況を放っておくことをお勧めしません。たとえば、社員のモチベーション低下は退職リスクを上げるだけでなく、サービス品質の低下をも招きます。サービスの質が落ちれば当然オーナーの満足度も下がることになり、管理離れが発生するようになるでしょう。そうなれば会社の収益性は悪化します。それどころか、その影響は社員に「薄給」という形で影響し、社員の更なる退職を誘発します。採用の難しい今、退職が続けば、もはや組織は安定性を保てません。収益性も退職リスクも一層悪化する「負のスパイラル」へと陥ってしまいます。
なればこそ、社員には「考える仕事」が必要だと考えます。考える仕事が負の連鎖を断ち切り、正のスパイラルへと導くのです。自分で部屋や壁紙を選んだ入居者が部屋に愛着を感じて長く住むように、会社やオーナーの収益改善を考え、制度やシステムの改善を考える「やりがい」ある仕事をした社員は、会社に対する愛着を持ち、長く働くようになります。何より長期勤続には、採用や教育コストの削減のみならず、ノウハウ等の知の財産を増やし、組織を成長させる力が眠っているのです。