空室改善提案のカギは、管理会社の組織デザインから

<サッカーのフォーメーションで考える管理会社の組織論>

 2014年は、ちょうどサッカーW杯の年だったので、賃貸管理業の組織を、サッカーのフォーメーションに擬えて解説をしてみます。本来、企業はそれぞれに戦術(経営戦略・事業戦略)が存在します。しかし、なぜか私が拝見する多くの管理会社では、超守備的布陣(6-3-1)を敷いているのです。

 先にも述べましたが、たくさんの種類の業務を1人に割り当ててしまうと、緊急性の高い仕事(クレーム対応)や、期限の決まっているルーティーン業務(退去立会・集送金・書類作成・入居審査等)が優先されてしまい、オーナー提案(空室改善・リフォーム・資産有効活用)まで辿りつきません。また、困った事に上記のルーティーン業務や緊急性の高い仕事にいくら人的資源を投下しても、管理会社としての生産効率は全く上がりません。オーナーや入居者から見れば、それらは管理会社がやるべき仕事ですし、現場スタッフはまじめに業務をこなそうとするほど、共用灯交換や草むしりという誰にでもできる軽微な「作業」が中心になるために、さらに生産効率が悪くなります。しかし、本来それらの「作業」は、従業員で無くてもできる仕事であり、もっとやるべき他の「仕事」がたくさんあるはずです。  

 守備的な布陣のワントップには「ポスティング」が配置されています。ある管理会社でのエピソードなのですが、その会社では管理課のマネージャーが、自らチラシを投函していました。ポスティング自体は決してダメとは言いません。ただ、生産性を考えるべきなのです。数千枚撒いて1〜2件程度反響があるかないか…ということに、マネージャーの貴重な時間を使うのは、費用対効果が悪すぎます。さらに聞けば、そのチラシはこれまで全く反響が無かった代物だったのです。しかし、捨てるのがもったいないと言う理由から、「残り数千枚は、私が責任をもって撒きます!」と毅然と言い放ちました。一見、身を粉にして頑張っているように聞こなくもないのですが、反響がないチラシを一生懸命撒くことは、何の成果も生みません。そこで私は、その方に「このチラシはすぐに捨ててください」と言いました。それから、すぐに失敗したそのチラシの敗因分析を行い、次の戦略を一緒に考えることにしました。

<管理会社の労働生産性マトリクス> 

 業務生産性マトリクス(生産性マトリクス)をご覧頂くと、縦軸には生産性、横軸には重要性(難易度)と書かれてあります。それぞれのカテゴリーにA・B・Cのランキングを付けてありますが、組織全体の最適配置を考えた場合、人件費の高いマネージャーや役職者ほど、指示をすれば誰でもできるような「作業」ばかりに時間を投じるのではなく、Aランクの「仕事」をして頂きたいのです。