空室改善提案のカギは、管理会社の組織デザインから

<守備の要は「仕組み化」>

 守備的ポジション(DF)の生産性向上のカギは「仕組み化」(いつ・誰が・何回行っても、同じ品質やレベルの成果物が出来上がること)です。守備的業務に位置する多くのルーティーン業務は、仕組みで業務効率を上げやすいのが特徴です。クレーム対応など突発的な業務は別として、DFのほとんどがルーティーン業務です。属人的な能力に頼りがちですが、一度仕組みを作り上げてしまえば、あとはそのルールを徹底させることで、効率よく同じ成果が出せます。「仕組み化」にはいくつか方法がありますが、例を上げると、部署別業務マニュアル作成・テンプレート化(繰り返し使う資料のひな形作成)・IT活用(管理ソフトや独自システム)・アウトソーシングの利用などがあります。例えば、IT化の具体例ですが、当社は月間90~100件程度「解約/原状回復工事」があります。以前は十数社へ、担当別に依頼を掛けており、ルールやフローも確立されていませんでした。そこで業者を5社程度に絞り込み、ITシステムを自社で構築して、工事業者と当社との工事案件を一元管理できる仕組みを構築しました。当社から見積もり依頼と言うボタンを押すと、先方の担当にEメールが届くようになっており、そのシステムで発注依頼、工事終了後の写真の共有もできるようにしています。また、ネット環境さえあれば、全社員が全ての案件進捗を一元的に見られるます。それからアウトソーシングについては、賃貸管理業界でも少しずつ認識されつつあります。人件費との比較も重要ですが、自社のスタッフでなくてもできる「作業」は、できるだけアウトソーシングすべきです。他業界では積極的に使われるアウトソーシングという概念が、賃貸管理業ではまだまだ馴染みがありません。繰り返しになりますが、限られた人材でやるべき業務は、できるだけ「作業」ではなく、考える「仕事」をするポジションに配置すべきではないでしょうか。

<攻めの提案は「見える化」がカギ>

 新規管理受託・空室改善・リフォームなど、管理会社にとってオーナー提案を行う機会は日々あります。しかし重要な割に、その提案のほとんどが「口頭」で伝えられています。いくら良い提案や商品紹介であっても、口頭で伝えられては提案の根拠や具体性にかけます。そもそも、説明をする人によって内容にバラツキがでますし、オーナーとの間で解釈に食い違いが出ても、お互いに気付かない可能性があります。そこで提案にも「見える化」が重要なのです。「見える化」とは、一般的に見えにくい業務を誰が見ても分かるようにオープンにして行くという意味合いでよく使われます。ただし、ここで言う「見える化」とは、出来るだけ数値や文字などのビジュアルを用いて、紙面等で比較提案をすることや、分かりにくい管理業務のサービス内容を目で見て伝えることです。

 例えば空室改善であれば、物件評価表という書式を利用して、良い点と改善点を「見える化」して、何が原因で空室になっているのか?という要因をはっきり示します。

『大家さん、相場よりも高いので、家賃を下げて募集をしませんか?』などと言う、根拠のわかりにくい提案をすれば、オーナーも良い気がしません。最終的にどんな商品でも「価格(賃料)が適正かどうか」が決め手ですが、それをどのように伝えるのかが重要なのです。ネットの普及により、かんたんに物件の比較がされるようになりました。消費者心理で考えれば、同じ賃料であれば、より良い条件の物件を選ぶはずです。物件の善し悪しを比較ができるように項目別に定量化すると、オーナーに理解して頂きやすくなるはずです。

 これから数ヶ月で、また繁忙期がやって来ます。賃貸需要が大幅に高まり、入居率を改善する機会がこの数ヶ月間です。このチャンスを活かすためには、組織全体を見渡して、あらかじめオーナー提案の時間を確保できる体制を整えることが大切です。技術的なことや、人の能力だけではなく、人材の特性を活かし最適な組織デザインをすることが、積極的なオーナー提案をするためのフィールド作りではないでしょうか。