空室改善提案のカギは、管理会社の組織デザインから

<管理会社の強みは2列目の「提案力」>

 攻撃的MFのセンターには、「オーナー訪問・提案」を配置しました。ここはオーナーの利益を最大化させ、かつ管理会社の価値を高める最重要ポジションです。管理戸数が増えると、良く起こる現象の一つにこのようなケースがあります。物件が増えれば増えるほど徐々に各オーナーと接触する時間が減り、ある日突然『物件の買手が決まったので、新しい管理会社さんに引き継ぎをお願いします。』と言われて解約されてしまいます。本来であれば、自社で専任媒介を頂き売却活動もできるはずです。さらには、他の自社管理オーナーへ売却して、オーナーチェンジという事で管理継続もできるわけですから、「仲介手数料と管理離れ」という非常に大きな機会損失を起こしているかもしれません。実際に私のクライアントで、数千台の駐車場管理を行っていて毎年たくさん管理が離れてしまうという話を聞きました。理由を聞くと、ゼネコンさんが建築提案をして、アパートが建って他社に管理が移行してしまうのだそうです。ちなみに、その会社はアパート建築の請負もできるので、大きな機会損失です。賃貸管理業の特徴は、最低でも毎月1回は、資産家であるオーナーと接触をすることができる「継続性」にあります。オーナーの資産運用提案とまで行かなくとも、常に接触する機会はあるのですから、積極的にコミュニケーションをとり、他社にオイシイところを持って行かれないようにしましょう。 

 そして右サイドには「リフォーム提案」。空室改善にはお金をかけずにできる事もありますが、抜本的な改善をするには積極的な再投資が欠かせません。リフォーム提案は物件の空室改善に大きな効果を発揮しますし、自社で請負う事ができればそれなりの利益も確保できます。それから左サイドには、不動産コンサルティングを配置しています。賃貸経営も地主オーナーから個人投資家さんの割合が増え、過去のように先祖代々の土地に固執することが減ってゆくでしょう。すると過去に比べ売買も活発になり、不動産の流動化が起こりやすくなります。オーナーさんは資産家ですから、不動産コンサルタントとして傍らにいられれば、建替え・買換え・新築プロディース・売買仲介や工事請負など、派生ビジネスを受注できる可能性がグッと高まります。賃貸管理だけではなく、オーナーの資産全体を見ながら資産運用設計のお手伝いができれば、オーナーさんが自社から離れるリスクは減るはずです。

 それから、ポイントゲッターであるトップポジンションには、「管理受託」を配置してあります。「管理受託」も、自社商品を紙面に「見える化」するだけで、オーナーに訴求しやすくなります。

<ポイントゲッターとコア業務>

 これらの仕事をオーナー担当ごとに、1人1人が全ての業務を横断的に行っている組織体制がたまにあるのですが、その大半が守備的な業務に忙殺されて、提案まで時間が取れないという結果となります。オーナーへの提案業務を増やし、組織の生産性を高めるためには、各業務分担を明確にして、行うべき業務をできるだけシンプルにしたほうが、組織全体としての「分析・戦略・提案」の時間を確保しやすくなります。サッカーと同様に、各ポジションには与えられた役割があるのです。ここで重要になるのが、中盤(MF)からフォワード(FW)の「コア」となる人材配置なのです。オーナー訪問や提案は、管理会社にとって一番力を入れるべき「コア」な仕事です。しかしながら、ほとんどの会社が、MF・FWに選手を配置せずに戦っている状況なのです。MFやFWこそ、オーナーの資産を最大化させる、管理会社の強みを発揮できるポジションなのですが、そこにはだれも配置されていないのです。MFやFWなどの、管理会社にとってコアな仕事は、オーナーとのコミュニケーションが中心ですから、外部に業務委託することが困難です。よって、人材は自社の強みを活かせる箇所に配置することが強みを伸ばしやすいのです。